エムポックス(サル痘)ウイルスの抗原検査キットの開発に成功
抗体取得・抗体多様性解析部門|2025.6.24

先端抗体医薬開発センターの磯部らの研究グループは、東洋紡株式会社、富山県衛生研究所、並びに東京都健康安全研究センターとの共同研究で、イムノクロマト法を用いたエムポックス(サル痘)ウイルスの抗原検査キットの開発に成功しました。この抗原検査キットは、皮膚病変(発疹部位)中のエムポックスウイルス抗原の有無を15分間で検査することができます。この検査キットは特別な測定機器を必要としないことから、エムポックス罹患者が増加しているアフリカなどで迅速な検査を行うことが可能となります。本検査キットに用いられている検出用抗体と捕捉用抗体は、富山大学が独自開発した迅速抗体取得技術を用いて取得されたものです。高性能な抗体を用いることで、高感度な抗原検査キットの開発が可能となりました。本研究成果は、「Journal of virological method(掲載誌)」に 2025 年 5月8日(木)(日本時間)に掲載されました。 ( DOI:10.1016/j.jviromet.2025.115164)。
詳細説明
近年、コンゴ民主共和国とブルンジ共和国でクレードIbに分類される新たなエムポックスウイルス株による感染症例が増加しており、その拡散を制御する緊急性が高まっています。そのためには患者の傍らで検査し,その結果を速やかに診療に活かすイムノクロマトグラフィーを用いた抗原検査キットの開発が急務となっています。私たちは、エムポックスウイルスの核タンパク質に対するモノクローナル抗体を開発することで、エムポックスウイルスを特異的に検出するための抗原検査キットの開発に成功しました。このキットの検出限界は、ウイルス培養液添加試験において1.0 × 10³ pfu/mLであり、ウイルス感染者から採取されたリアルタイム反応閾値Ct≤25を示す検体における検出率は100%で、高感度、かつ特異的にエムポックスウイルスを検出することが可能です。この検査キットは、アフリカなど資源が限られた環境においても、ウイルス感染が疑われる人々の臨床的判断を支援するための理想的な迅速診断ツールになると期待されます。
論文